東京高等裁判所 昭和33年(て)10号 決定
請求人 須田久雄
〔抄 録〕
本件記録並びに前示麻薬取締法違反被告事件の本案記録によれば、請求人に対する右被告事件につき、昭和三三年二月二七日東京地方裁判所が言渡した有罪判決に対し、同人から、控訴の申立があつたので、当裁判所において、審理の結果、同年八月九日、控訴棄却の判決を言渡したところ、その上告の提起期間内に、上訴権者から上告の申立がなかつたため、該期間の最終日である同年同月二三日の終了と同時に右判決が確定したものであること、及び、その後同年同月三〇日に至つて、右請求人から、前示被告事件に対する上訴申立書と共に本件上訴権回復請求の書面が当裁判所に提出されたものであることが認められる。よつて、右上訴権回復請求の当否を案ずるに、刑事訴訟法第三六二条によれば、上訴権回復の請求は、同法第三五一条乃至第三五五条の規定により上訴をすることができる者が、自己又は代人の責に帰することができない事由によつて上訴の提起期間内に上訴をすることができなかつた場合に限り、これをすることができるものと解すべきところ、本件上訴権回復請求の理由とするところは、ただ、請求人は、病気のため、妻須田文江に上訴申立をすべく命じてあり、上訴申立をしたことと確信していたものであつて、上訴の意思があつたことはまちがいないというだけであつて、このようなことが上訴権者たる請求人が自己又は代人の責に帰することができない事由によつて上訴の提起期間内に上訴することができなかつた場合に当らないことは、極めて明らかであるから、本件上訴権回復の請求はその理由がないものといわなければならない。
(中西 山田 鈴木)